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第3回:加齢黄斑変性症の治療法
まず、加齢黄斑変性症には滲出型と萎縮型が存在し、治療の適応にあるのは前者の滲出型であることが前提となります。
眼科受診に際し、加齢黄斑変性症の診断を受けても、“現時点で治療の適応はございません”と言われた場合は、萎縮型のように活動性がない病態である事が考えられます。
さて現在わが国で行われている主な治療法ですが、以下の2つになります。
- 1.光線力学療法(PDT)
- 2.抗血管新生療法
いずれも、加齢黄斑変性症の原因である脈絡膜新生血管にダメージを与える治療法です。
1.光線力学療法(PDT)
まず、特別な波長に反応する光感受性薬剤(ビスダイン)を点滴します。ビスダインは新生血管に集積しやすい性質を持ち、点滴15分後にそのピークを迎えます。
そのタイミングで、正常な網膜には影響を与えない程度の弱いレーザー光線を病変部に照射します。
するとビスダインは活性化され、活性酸素様物質を産生して新生血管にダメージを与えることになるのです。
この治療法の良い点は、まったく痛みを伴わない治療法であることです。
レーザー治療というと、痛いのではないかというイメージもあるのですが、まぶしくも痛くもありません。
逆に不都合な点は、光に敏感な薬剤であるビスダインの特性のために、点滴後5日間は太陽光線や裸電球・ネオンライトなどの光源にあたってはいけないことになっています。
これは、体内にビスダインが残ってしまうと、前述したような光と反応して炎症症状を引き起こす可能性があるからです。
軽症の場合は日焼け程度ですが、重症の場合は焼けどのような症状を引き起こすこともあります。
そのため、基本的には屋内でカーテンを閉め切って生活していただくことになります。
ただし、暗室にとどまる必要はなく、蛍光灯など通常の室内灯はむしろ積極的に浴びるよう推奨されています(体内に残った薬剤を早く代謝させる効果があります)。
テレビを見ることは問題なく、携帯電話の使用も可能です。
2.抗血管新生療法
新生血管の成長や増殖を抑える薬剤(抗血管新生薬:ルセンティス、マクジェンなど)を、直接眼球内へ注入する治療法です。
この治療法の良い点は、PDTのように加療後5日間の生活制限がないことです。
不都合な点は、注射手技自体の持つリスクで、ごく少数例ですが加療後に細菌感染による眼内炎の合併報告があります(ただし、1000〜2000人に1人というごく少数例です)。
目に注射をするという恐怖感もあって敬遠される方は多いですが、点眼麻酔のみでほとんど痛みはなくなりますし、実際の処置時間もほんの3〜5秒程度です。
共通する課題としては
1.いずれの治療法も高額である事
2.いずれの治療法も治療効果には個人差がある事
3.いずれの治療法もごく少数例ですが、術後合併症のリスクがある事
しかし、加齢黄斑変性症は無処置で放置した場合、中心視野欠損が進行し確実に視力低下がすすんでしまう病気です。
改善がなくとも、その進行を止めるという点からは、積極的加療が望ましいと考えます。
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